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30周年を迎えて

2023年8月12日、株式会社ジャパンEAPシステムズ(JES)は創立30周年を迎えました。
当社のサービスを導入してくださる企業の方々、時に勇気を出して相談してくださった方々、様々な企画や研修・研究会等でお世話になった企業・団体や専門職の方々、社内においてはスタッフや顧問の先生方など、多くの皆様とのご縁と支えがあったからこそ、今もこうして「人を援ける」というやりがい溢れる仕事を続けることが出来ていると感じています。
全ての関係各位のご支援とご厚情に謹んで感謝申し上げます。

クリニックの片隅に設置された一台の電話機から始まったJESの相談は、EAP(従業員援助プログラム)の由来そのままに、職場のアルコール関連問題への早期対処を焦点のひとつとしていました。当初は法人契約も実際の相談も数えるほどしかありませんでしたが、一つ一つの相談に精一杯対応し、企業担当者の方々と苦労を重ね、時にお叱りも受けながら様々なことを学ばせていただきました。

実際の相談内容はアルコール問題に留まらず、過重労働、職場の人間関係やハラスメント、家族との関係など職場内外の幅広い困りごとが寄せられました。中でも、うつ病やパニック障害をはじめとしたメンタルヘルス不調に関する相談は国の啓発もあって利用の中心的なテーマとなりました。「復職支援」という言葉もなかった時代に、メンタルヘルス不調による社員の離職という企業損失を防ごうと奮闘した経験は、今も続く当社の礎となっています。周囲の方との連携対応の結果、守れた命も100を超えるのではないかと自負しています。

しかし、相談に繋がらないままメンタルヘルス不調となったり、不本意・不用意な離職をしたりという方もまた多くいらっしゃるものと思いますし、私たちが支援をしても力及ばず残念な結末となったことも何度もあります。やりがいの裏には常に難しさや怖さもあり、だからこそ研鑽と成長が常に求められると考えています。

JESでは、メンタルヘルスとキャリアの両側面から個人と組織に貢献できるよう研鑽を続けてまいりました。昨今は、健康経営の中でJESとEAPの原点であるアルコール問題も取り上げられています。私たちの行ってきた、人々が健康に自分らしく働けるための支援をこれからも進めていくことが、人的資本経営や健康経営といった社会が目指す未来につながるものと改めて感じております。

皆様には引き続きご指導ご鞭撻をいただけますようお願いをして、私の挨拶といたします。
今後とも、株式会社ジャパンEAPシステムズをどうぞよろしくお願いいたします。

株式会社ジャパンEAPシステムズ
代表取締役社長 榎本 正己



歴代社長インタビュー


新貝 憲利(社長在任期間 1993年8月~2013年6月)


代表取締役会長

新貝 憲利

会社設立の背景やきっかけを教えてください。

当社のグループ機関である成増厚生病院が1970年代から世に先駆けて行ってきたアルコール医療における支援の対象は、失職し家族も離散した依存症患者本人の治療だけでなく、まだ仕事がある依存症者の家族、更に企業の就労者の相談へと拡がっており、私も医師として早期対処や周囲のサポートの重要性を感じていました。
1980年代に米国留学をした際に、勤労者のアルコール問題やうつ病等の心身の不調に対して周囲のサポートも引き出して早期対処するEAPの仕組みを知り、医療での経験との共通点に驚くと共に、今後必ず日本の企業でもメンタルヘルスへの取り組みが求められると考えるようになったのです。
帰国後は働く方々の治療を精力的に行いながら、病院や企業の医療スタッフ等と2年程の勉強会を積み重ね、1993年8月12日に法人化しました。

社名「ジャパンEAPシステムズ(JES)」の由来はどのようなものでしたか。

法人化に際し、前身となった勉強会のメンバーから会社名を募ったところ、出た案が「ジャパンEAPシステムズ」。日本で初めてEAPの専門機関を作る、これから日本にEAPを広めていく。だからジャパンEAPシステムズ。その志に加え、「JES(ジェス)」という響きも皆が気に入り、全員一致で決まりました。
その後、私が発起人となり、関連省庁や各種協会、企業の人事・産業保健スタッフ、成増厚生病院アルコールセンターと高田馬場クリニック(現・慈友クリニック)のスタッフ等からなる「EAP研究会」を発足。上場企業800社を対象とした調査や、我が国の職場のメンタルヘルス・アルコール問題に関する議論を行い、企業のニーズ等の把握から会社としての活動を開始していきました。

当初から順風満帆だったのでしょうか。

いや、設立当初はEAPどころかメンタルヘルスという言葉も知られておらず、研究会の委員からも「時期尚早」との声をいただくほどでした。実際、設立後しばらくは、相談窓口としてEAPを導入する企業は殆どなく、派遣相談と研修依頼がたまにある程度。なかなか苦しい時期でしたが、必ず社会に求められる時代が来ると信じて経営を続けてきました。
その後、心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針(1999年)、事業場における労働者の心の健康づくりのための指針(2000年)を端緒とした国の動き等もあり、企業が急速にメンタルヘルス対策に取り組むようになったのは皆様もご存じの通りです。
法制度等は確かに私たちにとって大きな追い風でしたが、それ以前から日本におけるEAPの必要性やあり方を考え、培ってきた知識や経験があったからこそ、速やかに企業を支援できたと思っています。
当社が30年続いたのは素晴らしいですが、驚きではありません。企業や個人の困りごとがある限り、正に精神科医療としては初期介入であり、そこに寄り添うEAPが必要とされ続けると、設立の時から信じてやみません。



松本 桂樹(社長在任期間 2013年7月~2021年6月)


ビジョン・クラフティング研究所 所長

松本 桂樹

――― JESとの出会いを教えてください。

現会長の新貝が立ち上げた高田馬場クリニック(現・慈友クリニック)に、初の心理職として私が採用されたのが29年前。設立3年目のJESには、まだ専任スタッフはおらず相談などの本格的な活動もない状態で、私はクリニックで心理職業務の経験を積みつつ、JESの調査活動なども手伝っていました。
そんなある日、新貝から「EAPをやれ」と言われ、私がJES最初の専任スタッフとして働くことになりました。電話機を1台購入し、クリニックの片隅でクリニックのスタッフの助けを借りながらJESのEAPサービスを立ち上げました。「EAP研究会」からの流れで「心とからだの健康セミナー」を開催して広報し、営業担当としてサービス説明を行い、その流れで相談に乗ったりと、前例なく正解もわからない中で自分なりに懸命に活動した日々を今も鮮明に覚えています。投げ出したいと何度も思いましたが、EAPの面白さ、自分しかいないという責任感、日本にEAPを広めるという使命感を持って仕事ができる喜びも、自分を奮い立たせる源でした。

――― サービスで大事にしてきたことは、どのようなことでしたか。

長時間労働など職場要因が大きい場合や、自殺リスクなど緊急度の高い場合など、EAPで出会う相談には、労働者個人へのカウンセリングだけでは解決や対応が難しいものも少なくありません。そこでJESでは医療機関で活躍してきた専門スタッフのノウハウと経験を活かし、企業との連携を大事にしてきました。また、カウンセラーを正社員雇用し、相談、連携、研修など幅広い業務を担う体制を作ってきました。様々な業務を経験することが専門職の財産となるという考えからですが、カウンセラー自身が一労働者としての大変さを実感できるのも利点の一つと考えています。
JESが30周年を迎えられたのは、勤労者を支援する勤労者として自分達も精一杯努力し、日々成長しながら品質のよいサービスを提供し続けてきたスタッフの奮闘があったからだと思っています。

EAPを広げ、続けてこられた秘訣はなんだったのでしょうか。

「JESは宣伝が下手」と言われることがあります。確かに広告媒体を利用した宣伝は殆どしてきませんでしたが、私自身は学会誌や専門誌等の執筆を積極的に行い、専門家として信頼されることを目指し、発信を重ねてきました。JESのサービスの品質や特徴をしっかりと伝えれば、私たちのミッションや支援の形に共鳴してくださる企業・人事の方はきっといる、きっと届くと信じていたからです。
幸い多くの企業・相談者の皆様が私たちのサービスを大切だ、相談してよかったと言ってくださいます。その言葉の積み重ねが、個人や企業や社会にとって「大事なこと」をしているという私たちの自負となり、支えとなり、ここまで続けてこられたと思っています。



榎本 正己(社長在任期間 2021年7月~現在)


代表取締役社長

榎本 正己

JESとの出会いを教えてください。

JESが設立10年となる2003年、関西支社の立ち上げに際してカウンセラーの募集があると大学時代の友人から聞き、「正社員雇用」に釣られて応募。EAPのEの意味さえ知りませんでしたが、相談室長だった松本と大阪・難波の事務所で面接して採用されました。 数十社の契約企業からの相談に多数の先輩方が忙しく対応する本社に比べ、当時の関西支社はわずか2名。契約も少なくお世辞にも忙しいとは言い難い状況でした。営業担当として震える手で名刺を渡してサービス説明し、その流れで相談に乗ったりしながら少しずつ契約や相談が増えてきたのは2005年頃から。これと並行して九州、中部、東北に支社が開設され、全国のお客様への対応力が増すと共に、社内においても本社支社間、支社同士での交流が増えて心強さや刺激を感じたものでした。

EAPを取り巻く環境はどう変化してきましたか。

メンタルヘルスに関する知見を持つ人事産業保健スタッフや社内カウンセラーが増え、外部の専門家としてEAPにはより高い専門性が求められるようになりました。個人情報保護や情報セキュリティが厳しさを増す一方、EAPとの情報連携を求める企業の声もまた増えています。働く人すべてに関わるワークエンゲイジメントやwell-being、キャリア支援の注目度が高まっても、休職者の職場復帰支援の必要性が減るわけではありません。
職場のメンタルヘルスやEAPに求められるものはこの10数年でどんどん広く高くなり、もちろんそれは専門職としてのやりがいや成長にもなるのですが、対応の難しさは確実に増していると感じます。近年は当社内の教育体系が徐々に整ってきたとはいえ、これだけ高度化した環境や課題に適応して対応していく今のスタッフは本当にすごいと感じています。

これからJESはどういう方向を目指していますか。

職場と連携もする個人支援、それに伴う人事・管理職のマネジメント力の向上、相談内容を活かした研修。JESのサービスは個人支援を中心に構成されます。また、「こういうことは出来ないかな?」といった企業の皆様の声を聴き、対話や議論をしながら様々な取り組みを行ってきました。JESのサービスはお客様と共に手作りしてきたと言えます。
しかし今、女性・高齢者・若年層・外国人を含む全ての労働者、組織全体を元気にする支援が求められています。これらは既に個人支援や個別企業において実施しているものではありますが、対象者の絶対数を考慮すると、デジタル技術やAI等を用いたより効率的かつ広範な支援は不可欠になると思われます。
ただ、私たちにとってデジタル技術の活用は、人と人とのつながりを創るというミッションに向かう手段であり、「人が丁寧に聴く」という30年続けてきたサービスの本質や品質を変えるものではありません。これまで皆様に支え育てていただいた縁と恩を胸に、これまで以上に企業と相談者の声に耳を傾け、これからも皆様から沢山の「相談してよかった」をいただけるよう、より多くの方の健康と幸福に寄与できる組織になっていければと思います。


沿革